リミナリティ (Liminality)
Oawa Mountain, Kamiyama, Tokushima, Japan
Concrete platform: 8x4m Stone surface: 5.5x2m Timber bench Tool box with carving chisels
Liminality(リミナリティ)は、大粟山で、アーティストが神山住民と共に始めたプロジェクトであり、鑑賞者に参加してもらうことで、進化し続ける完成形のない作品だ。訪れる人がゆったりとした時間を過ごしながら、その場に用意された道具を使って、その痕跡を石に刻み、記憶にとどめてくれるような空間。周辺とは一線を画すこの作品は、特定の意味をもたない空間なので、見る人それぞれが、自由に意味づけし、解釈を加えてほしい。
作品名のリミナリティは、ある空間と別の空間を分け隔てる「敷居」を意味するラテン語のlīmenに由来する。リミナルな空間とは、過渡期、境界状態にある人が置かれた状況を指し、ふたつの扉の間にある廊下のような物理的な空間という意味で、さらに、人生のある段階が完了しつつあるが、次の段階はまだ始まっていない情緒的な移行という意味でも使われる。また、リミナリティは、境界をまたぐ心理的な移行の過程、過去には戻れないが、次の新たな段階もまだ確立されていない、不確実性と新たな可能性に満ちた移行途中の間を表す言葉として用いられる。
リミナリティとは、アーノルド・ヴァン・ジェネップが1908年に著書『通過儀礼』で使った用語で、彼によれば、すべてとは言わないが、文化を問わず、儀礼の大半は、人がある社会的な地位や状況から別の地位、状況に移動する機能を持つ。ヴァン・ジェネップは、人生における移行期に付随する儀礼の規則性を最初に指摘した人類学者でもある。彼は、4類の主要なリミナルな空間体験:物理的な移動、社会的な地位の変化、状況の変化、時間の経過を挙げ、これらはすべて、場所、社会的地位、状態、年齢といういずれかの変化を伴うと指摘する。また、人生の節目に行う様々な儀礼は、文化によって詳細部分の相違はあれ、本質的には、万国共通であると述べている。
リミナリティは、生涯に起こる、物理的、情緒的、比喩的な変化を表し、リミナルな期間とは、人(もの)が以前の状態から未来の状態に移行するまでの過渡期を意味する。
世界的なパンデミックにより、人類全体が、リミナル状態に置かれている。多くの点で、コロナ以前の世界は終焉を迎えたように思われるが、まだ新たな現実は始まっていない。
References:Marc Augé, Non-places: introduction to an Anthropology of SupermodernityArnold Van Gennep, Rits of PassageMichel de Certeau, The Practice of Everyday LifeMichel de Certeau, Walking in the City
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fot. Masataka Namazu